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光原百合さんインタビュー

◎プロフィール
1964年広島県生まれ。大阪大学大学院修了。尾道市立大学日本文学科教授。1998年、「時計を忘れて森へいこう」でデビュー。2002年、「十八の夏」で第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。ファンタジーやミステリー、童話など幅広く執筆。著書に「遠い約束」「最後の願い」「銀の犬」「イオニアの風」「扉守 潮ノ道の旅人」など。

写真撮影:麻生祥代(村上アーカイブス)



今春発売されたお仕事小説アンソロジー『エール!2』に、コミュニティ放送局で働く女性パーソナリティが主人公の物語「黄昏飛行」を発表した光原百合さんに、今回の作品について聞きました。



――『エール!2』について

実業之日本社刊行の、18人の作家が短編を寄せたアンソロジー小説『エール!』全3巻シリーズの2巻目です。昨年秋に発売されたシリーズ1巻目の『エール!1』は大崎梢さん、平山瑞穂さん、青井夏海さん、小路幸也さん、碧野圭さん、近藤史恵さん、『エール!2』は私のほかに坂木司さん、水生大海さん、拓未司さん、垣谷美雨さん、初野晴さん、今年10月発売予定の『エール!3』では、伊坂幸太郎さん、日明恩さん、原田マハさん、森谷明子さん、山本幸久さん、吉永南央さんと、私はともかくとして、今が旬の人気作家が参加しています。このアンソロジーのテーマはいわゆる「お仕事小説」です。いろんな仕事に取り組んでいる人を取り上げ、その仕事がどんなものか、そこに携わっている人がどんな気持ちでその仕事をやっているか、そういったことを描いて最近人気があるジャンルですね。今回は特に、仕事を頑張っている女性に応援(エール)になるような作品をというコンセプトで作られました。


――「黄昏飛行」は、舞台がコミュニティ放送局ですが、この作品を書くきっかけは?主人公の職業がラジオパーソナリティというのは指定があったのですか?

編集者から声をかけていただいた時に、どんな仕事でもいいけれどとにかく女性が頑張っている仕事がいい。ただ職種が重ならないほうがいいので、どんな仕事について書きたいか、まず寄せてくれと言われました。どんな仕事をしている人にしようかなと考えたのですが、自分の仕事(教員)については逆に書きにくいというところもありまして・・・
取材させてもらって、どんな内容の仕事か聞きやすい仕事がいいなあと思ってたら、いつもお世話になっているエフエムおのみちさんだったらいろいろ取材させていただけるぞ(笑)っと気がついて、コミュニティ放送局を舞台にしますと編集さんにお知らせしたんです。ちなみに18人の作家がそれぞれ出した設定は、見事に誰一人重ならなかったようです。


――作品タイトルと主人公が担当する番組名にもなっている「黄昏飛行」本当にありそうなステキな番組名ですね・・・

ありがとうございます。きれいな感じの番組名にしたいと思っていろいろ考えたのですが、サン・テグジュペリの小説に「夜間飛行」という作品がありまして、その言葉が非常に好きで、夕方の番組という設定なので少し変えて「黄昏飛行」にしました。


――スタジオ内での機器の操作などが細かく描写されていますが・・・

しっかり取材させていただきましたので(笑)


――やはり、黄昏飛行だから操縦席なのですか?

それが、機器の操作の様子を見て“飛行機の操縦席のようだな”と感じたから「黄昏飛行」というタイトルにしたのか、「黄昏飛行」とタイトルを決めたから操縦席に例えたのか、どちらが先か今となっては忘れてしまって・・・情けないのですが(笑)


――エフエムおのみちを取材されていかがでした?

話しながら、ゲストの反応を見ながら次の曲を用意して・・・パーソナリティがこんなに沢山のことを一度にしているんだなと、あらためて感心しました。
作品を読んでもらった編集さんも「パーソナリティの方は放送中にこんなにいろんな仕事をされてるんですね」とビックリされていました。


――コミュニティ放送局ならではです(笑)

そうですね、大きい放送局だとパーソナリティはアナウンスブースにいて、外に機械を操作する人がいたりするんですよね。


――ストーリーや登場人物のキャラクター設定は、どのようにして決まっていったのですか?

コンセプトが“仕事を頑張っている女性の応援になるように”ということだったので、とにかく女性が頑張っている話にしようと。で、あんまり“仕事ができる”っていう女性よりもちょっと不器用で、実は向いてないかもしれないのにひたすら頑張っているっていう女性の方が共感しやすいと思って・・・。新人パーソナリティとして若干空回り気味に頑張っている女の子が主人公というのが決まりました。彼女が放送しながら、事件なり出来事が起きたのを解決する話にしようと。軽いミステリー風にしたかったんです。そうなるとリスナーからファックスなりメールなり何か寄せられて、それが何かの謎になる話にしようと考えて・・・。どんな謎かは是非読んでいただければと思います。大した謎ではありませんが。
主人公以外の登場人物については、彼女がそういう不器用な人なので、自分で謎を解くより、誰か知恵を貸してくれる人物がいた方がいいだろうなあと思いました。じゃあ手助けするFM局のスタッフ達はどういう人がいればいいかと配置していった感じですね。一応、局長が一番頭のいいタイプで、それに若いスタッフが2人、賑やかしにいる感じなんですけど・・・で、いつの間にか局長とパーソナリティの女の子のラブコメディになったのは、自分でも書いていくうちにそうなったとしか言えないんですけどね(笑)編集さんからすれば、この『エール!』に収録される作品は、もっとラブの要素がある作品が多いと思ってたみたいなんです。若い女性が主人公の作品が多いですからね。それが意外とラブ要素がある作品が少なくって、『エール!1』にもほとんど無かったし、『エール!2』でも結局、ラブコメになったのは私のだけで、「貴重なラブ要素のある作品だ」と言っていただいています。


――全体的にテンポのよいコメディタッチのストーリーですね・・・

登場人物のやりとりをクスッと笑いながら読んでいただけると嬉しいですね


――持福寺の了斎住職が主人公の番組にゲスト出演する場面とか・・・光原先生のファンにはクスッと思わせる要素がありますね

そうですね、了斎は、以前書いた『扉守』という連作短編集に登場するキャラクターで、愉快なおじいさんです。どちらも舞台は尾道がモデルになっている架空の町「潮ノ道」、とはいえ、『扉守』はファンタジーで、「黄昏飛行」はファンタジーではないのですが、なぜかこっちにも了斎が出てきたんですねー(笑)。『扉守』を読んでいただいている方にはお分かりの通り、この人やたらと出張ってくるキャラクターで・・・まあ作者としても便利なんです、彼が出てくると話が進行するので。


――「別れても好きな人」をリクエストしますね

了斎だったらどんな曲を持ってくるだろうと考えたら「別れても好きな人」でした。


――でも持ってきたCDが違っていた

「好きになった人」だった、これも了斎らしいところではないかと・・・。それにこの場面は、パーソナリティの女の子のちょっとドジなところを書きたいというのもあって、放送中にリクエストとして渡されたCDが間違ってて、とっさに自分で唄い出してしまうという設定にしました。ほとんど放送事故ですよね(笑)


――主人公が放送の仕事に興味を持ったきっかけについて話す場面がありますが、中学校の時に聴いたラジオ番組の思い出を話しています。すごくリアルな感じがしたんですけど、これは先生自身の実体験ですか?

それが大変申し訳ないことに、私、当時はラジオを聴く習慣がなくって・・・よく友達なんかはラジオを聴きながら勉強したりっていうのがあったんですけど、私は何か音がしていると集中できないので、「ながら勉強」という習慣がなかったんです。だからこれは私の経験ではなくて、書いているとき考えました。今は、自分が出していただくようになったこともあって、ときどき聴いていますよ。


――テレビとラジオの違いについて主人公が語る場面がありますがこれは?

こちらでもお馴染みパーソナリティの藤井優希さんにネタを頂きました。


――藤井さんは、先生にとっては大学の教え子でもありますよね

ええ。彼女から「テレビは“みなさん”と語りかけるのに対し、ラジオは“あなた”と語りかける1対1の関係のメディア」って言うようなことを教えてもらって、「これは使える」と思って作品内でも使わせてもらいました。より親近感を感じられるメディアがラジオですね。


――コミュニティでもありますしね、“知ってる人が出てる”みたいな

そうですね、私も出演したら「聴きましたよ」って声をかけられたりします。


――作品の中で先生が特に気に入ってる場面は?

ストーリーを説明しないとわかりにくいかもしれないので、ラブコメ部分と言っておきましょうか(笑)


――この作品の続編の予定は?

『扉守』も含めて「潮ノ道シリーズ」は、ファンタジー、ミステリー、青春小説といくつかのジャンルにまたがって書き続けていきたいなと思っています。この「黄昏飛行」のキャラクターを気に入ったと言って下さる方が多く、「この2人(主人公と局長)で1冊書いてみたら」と言っていただいたりするので、出来ることなら書きたいなと思っています。


――ぜひお願いします!

頑張らないと・・・書かないといけないものがいっぱいです(笑)


――どんな人に読んでもらいたいですか

読んでいただければ誰でも嬉しいんですけど(笑)シリーズのコンセプトが「仕事に疲れている人に元気を出して欲しい」ということですから、そういう気持ちで読んでいただけると、より嬉しいかなと思いますね。アンソロジーというのは、一つ一つの作品が短いからすぐ読めますし、知っている作家の作品を目当てに買って、一緒に載っている知らない作家を読んでみたらこの人も好きになったというようなきっかけづくりにもなりますから、手に取っていただけると嬉しいです。